フェニックスからデンバーへのフライトは随分な乱気流に巻き込まれました。
窓の外を見ては目が回るし、機内をみると満席の乗客の頭が左右に
グラングランと揺れ、同じく目が回る。目を閉じたら足元が地球の方向を
向いていないんじゃないかと思えて酔ってくる。
まるで子供に遊ばれたおもちゃの飛行機に乗っているかのようだった。
飛行機の後方に座っていた僕の隣にはFrontier航空のパイロットが、その向こうにはアメリカン航空のパイロットが移動のために制服のまま座っていた。心強く思ったものの、二人とも機内ではネットが使えるのか、タブレットで飛行ルートや気象情報らしき画面と窓の外を交互にジッと見ている。険しい表情をする彼らの存在は僕を安心させる手助けには全くならなかったのだ。
そんな中、機長からのアナウンスはデンバーは「gusty wind(突風、強風)で、乱気流が予想されている。」というだけ。
機体がミシミシ音を立てて揺さぶられ、ヒューンと落下する。
この揺れでも最後まで大声で雑談をしていた前の座席の人たちもついに
前の座席におでこを付けて手を合わせ祈り始めた。
僕は滞在していたメキシコからデンバーまで様々なルートがあったにも関わらず
このフライトを選んだ自分を恨んだ。
遂には東京での自分の生活が頭に浮かんできた。地味だし、もっと上を思って理想ばかり追っているけど、あぁ、あれで十分なんだな。あの部屋急降下しないし。。
まるで紙飛行機のように儚い存在に命を預けているように感じたフライトだったが、
最後の最後まで左右に揺れたり傾いたり急降下しながらデンバーに着陸。
後方にいたCAさんたちは、こんなの経験したことある?と着陸後にお互い話していた。それぞれもっと酷いのを経験しているらしが、そう語るくらいの酷さだったようだ。
怖そうなMを心配していたので僕はある程度気が紛れたが、着陸後は
僕はしばらく気持ち悪くて立てなかった。
僕が降りる際に、CAさんに話しかけられた。
「信じられる?私また同じルートを戻らないといけないの!」と。
僕を心配していたMは、機体を降りてトイレに入った途端にもどしてしまった。
これ以上酷い乱気流に学生の頃あったが、あの時は一人だったからか、若かったからなのか、今回のように心臓が萎縮するような思いはしなかったし、気分が悪くなることもなかった。ただ急降下するだけで機内の悲鳴や混乱ぶりはその時のほうが酷かったが、今回のように振り回されるような揺れ方ではなかった。
この時、テキサス州やその周辺には嵐が来ていて、テレビでは竜巻の注意報が流れていた。その嵐がアメリカの南西部一体やミズーリにかけてまで影響を及ぼしていたらしい。
デンバーに飛び立つ際、フェニックスの街の背景には高く舞い上がる茶色い砂嵐が見えていた。後でニュースを見ると、アリゾナでは砂嵐がひどく、州間高速を走るトラックなどがなぎ倒されている。
遠くに白いロッキー山脈が見える。
走っているのはこの数日前に開業したという空港とダウンタウンを結ぶ列車。
デンバー到着時はその前に降り立ったフェニックスと変わらない暖かさだったのに、その夜には冷え込んで雨が降り出した。
晴れたと思ったら雨が降り出したり、寒いと思ったら暖かくなったり。
「これが典型的な春のデンバーだよ」とWhole Foodsの店員さんは話していた。
お店を出ると "It's Denver!"と別の店員さんとお客さんが空を見上げて話していた。
デンバーの人はデンバーが大好きなようだ。シアトルの人はシアトルを、ボストンの人はボストンを、LAの人はLAを欠点も含めて愛し、It's so L.A.というのと同じだ。
出発する日のデンバーの朝は霜が張り車や屋根は白くなっていた。
日本への飛行機は、ロサンゼルス発。ロサンゼルスまで車で行こうか、そんな話を本気でするほど乱気流の恐怖症になっていた。これはデンバーというよりは、ここ数週間の気候によるものなのだろう。
しかし命のリスクを考えれば、飛行機よりも車のほうが余程危険だろう。
実際、デンバーから西へと最短距離で抜けるには通らざるおえないVail付近では
雪が散らついているようだった。
到着後の乱気流レポートなるものを見てみると、
デンバーだけが赤いSevereになっている。
(それ以上のExtremeというのは経験したくないものだ。)
しかし出発日にはクリアーされていて、乱気流は東のほうへ移動していた。
アメリカン航空によると、ここ2、3週間は乱気流が酷いとのことだった。
あくまで傾向ですが午後以降は大気が不安定になるので、朝のフライトを選んだほうが揺れる可能性が少ないとのことだった。今回はギリギリ午前中。
酔い止めなるものを初めて飲んで、飛行機に乗った。空港に行くだけで気分が悪い。
あれれ、数日前まで飛行機とか空港とか結構好きだったんだけどなぁ。
今回の機長はとても丁寧な人で、安心することができた。「今入った情報によると、コロラドを抜けるまでは乱気流の可能性がありますが、今朝飛んできた際にはそれほど乱気流はありませんでした。」
離陸すると飛行機はガタガタと揺れ出したが、前回とは比べ物にならない。
まめに機長からアナウンスが入る。「Thank you for your patience. あと25マイルほどで、乱気流のエリアを抜ける予定です。このスピードだと、5分ほどで安定するでしょう。」
LA到着時に揺れがあったが、前のフライトに比べれば「僅か」である。
丁寧な機長さんのおかげで飛行機に嫌な印象を持ったまま旅を終えることは免れた。
それにしても、去年から伊丹や南紀白浜まで3往復していて、北海道もタイも台湾もバリ島も行ったものの、どのフライトでもこの「僅か」も揺れていない。
今回の旅行中のアメリカ上空はよほど荒れていたようだ。
そんなこともあり、いかにして脱出するかを考えていた
短いデンバー滞在は思い出深いものとなりました。
少しずつ旅行記を書いてきたいと思います。